少し飛んでしまったが、吉本隆明の『抒情の論理』にふれたわけだから、『高村光太郎』(春秋社)に言及しなければならない。その前に高村の『道程』の版元の抒情詩社を取り上げておく。あらためて近代文学館複刻の高村光太郎『道程』を保護函から取り出してみると、その装幀が発行者の内藤鋠策によるものだとわかる。 『近代出版史探索Ⅵ』1023で、内藤と抒情詩社、詩雑誌『抒情詩』創刊に言及し、やはり『同Ⅶ』1329の中西悟堂の証言を引き、大正二年に内藤の『旅愁』、北原白秋『桐の花』、齋藤茂吉『赤光』が出揃い、歌壇史的に見て、興味深い年だったことを既述しておいた。内藤は大正元年に抒情詩社を立ち上げ、三年に『道程』の自…