ドイツオペラ特にワーグナーが専門の山崎太郎東工大リバラルアーツ研究教育院教授の「春・音楽祭」プログラム寄稿の解説は、面白く参考になる。◯神話世界を舞台に、至上の権力をめぐる登場人物たちの争いを、愛や憎しみの諸相とともに描いた舞台祝祭劇《ニーベルングの指環》四部作ーこの作品の内部には一つの世界が誕生し、滅亡するまでの長大な時間が流れているが、しかし一方で、登場人物たちの血縁関係に思いを巡らすなら、祖父母から孫に至る三世代の家族の物語と見なすこともできる。(p.68)◯ところで、ヴォータンは最高神でもあるから、「遠大な構想」は「天から人間に下された運命」と言い換えてもよいだろう。そこから仄見えてく…