その後、妹の千恵は、キヨを頼って台湾に来ることになった。警察官と港へ迎えに行った。船から降りてくる人達を目で追った。遠目でもその風貌に、お互いが”確かだ”と確信した。大人になった妹との再会、懐かしさが込み上げてくる。 「姉さん!」妹は泣きながら飛びついてきた。「ちぃちゃんかね、よう来たね」と、キヨは千恵の背中を擦りながら涙が溢れた。十数年の隔たりはいっぺんに吹き飛び、厚い血のつながりを感じ愛情が沸々と湧きあがった。 妹の境遇といえば、母親の実家で気兼ねをしながら貧しい暮らしをしたと聞く。学校にも行けなかったようだ。キヨは、何としてでもこの不憫な妹の面倒を見ようと、気持ちを強く持った。 税関長宅…