文芸評論家(1909-1974)。 福岡県出身。京都大学文学部中退。
著書は『復興期の精神』『鳥獣戯話』『室町小説集』『近代の超克』『アバンギャルド芸術』『新編映画的思考』『恥部の思想』など。 また、カフカ作品の翻訳を手掛けた。
脚本家の花田十輝は孫。
プログラムとチケット半券(1966) 木下順二作『オットーと呼ばれる日本人』宇野重吉演出、劇団民藝公演。一九六六年九月の再演だ。新劇史に残る名作名演との噂には接していた。が、初演は一九六二年。私は世代的に、間に合っていない。 いつか再演をとは、劇団の腹づもりにも入っていたそうだが、思いのほか早く再演の機会がやってきた。木下順二の書下ろし新作公演を前宣伝していたのだが、台本がどうしても間に合わない。急遽『オットー』再演に切替えられた。 日夜苦吟に苦吟を重ねても、作者がどうしても幕切れを書けない。なるほど、芝居の世界にはそういうこともあるのかと、高校二年生は初めて知った。作者の遅筆苦吟のおかげで、…
これまで、定年後再就職せず無職のまま自分の可能性を耕していく生き方をしていればいいと自分を納得させてきた。ところがここ数日、夢に見る内容を振り返ってみると、お前はどんな仕事をして何を残すのか、という問いが発せられているような気がする。あれは四年ほど前のことだろうか、ある友人がぼくに突きつけた言葉が今も残り続けているらしい、、、 「お前は仕事で何を残したのか?」 男としてその問いに答えられないのは、辛いことだ。ぼくが選んだ職業は、何となく、仕方なくだった。これはいけなかった。ヘルマン・ヘッセと同じで、将来に対する明確な見通しをどうしても持てなかったから、何となく、仕方なくがいつものやり方だった。…
岡本太郎の友情 作者:岡本 敏子 青春出版社 Amazon 若い頃は岡本太郎の本を狂ったように読んでいたけど大人になって読まなくなったな。ということで久しぶりに読んでみたけど本書は岡本太郎が生前に親交のあった人々との話を敏子さんがまとめた本。石原慎太郎、石原裕次郎、丹下建三、瀬戸内寂聴、川端康成、北大路魯山人、勅使河原宏、梅原猛、パブロピカソ、ジョルジュバタイユ、花田清輝、海藤日出男、岡本かの子、カラスのガア公。芸術は爆発だ!同じことを繰り返すくらいなら死んでしまえ!人生の目的は悟ることではありません。生きるんです。人間は動物ですから。太陽の塔のなかに入りたいな。
箱根駅伝の裏番組視聴で、適当にチャンネルを回してたら偶然視聴しました(但し全部では無く途中から)。こんな番組が去年ヒットしていたとは無知なため知りませんでした(1/1の「タローマンヒストリア」再放送は未見)。 全話と言っても「1話5分」が10回なので大した時間ではありません。 最近は民放よりもむしろNHKにこの種のユニークな番組が多い気がします(製作はNHKでは無く、下請けというケースが多く、これも下請けのようですが)。 TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇 - Wikipedia 「1972年(50年前)*1に放送されたが、長い間忘れられてきた巨大変身ヒーロー物の特撮作品」の再発見、再評価とい…
花田清輝、中野正剛、『我観』『真善美』といえば、それらにまつわる前後史があるので、そうした事実にも言及しておかなければならない。 まずは前史からふれてみる。中野正剛の弟秀人は早大中退後、大正九年に『文章世界』の懸賞当選論文「第四階級の文学」によってプロレタリア理論の先駆的ポジションを得て、朝日新聞記者となる。演劇、文芸評論を手がけ、実際に演劇にも関わるが、十五年にはイギリスやフランスにわたり、絵も描き、昭和六年に帰朝し、自らの滞欧洋画展覧会を開く。十五年には花田清輝と文化再出発の会を組織し、総合文芸誌『文化組織』を創刊し、エッセイ、小説、戯曲などを書き、「魚鱗叢書」を企画刊行している。 それら…
文フリ東京で後藤明生文学講義CDをお求めいただいた方には、リスニングガイドを差し上げます。筆者は東條慎生さん。10月に出版された東條さんの著書『後藤明生の夢』も販売します。ブースの店番は、私と東條さん、私の夫、サラリーマンロッカーキノテツの3人体制!ぜひお立ち寄りください! pic.twitter.com/JouTXwG3c5— アーリーバード・ブックス (@earlybirdmeisei) 2022年11月13日 先頃開催された秋の文学フリマ東京で、アーリーバード・ブックスから後藤明生文学講義のCDの後篇が先行販売されました。1982年、NHK文化センターでの谷崎潤一郎『吉野葛』講義の録音カ…
先に続けて言及してきた『我観』と我観社は戦後におけるアヴァンギャルド的な出版の水脈へとリンクしていくのである。それは近代出版史の事実からすれば、まったく意外でもないのだけれど、『我観』創刊号、及び我観社の花田清輝『復興期の精神』(初版、昭和二十一年)、真善美社の加藤周一、中村真一郎、福永武彦『文学的考察1946』(再版、同二十三年)を並べてみると、やはり奇異な思いはまぬがれない。堂々たる四六倍判の雑誌に対して、菊判フランス装とはいえ、並製に近く、用紙も粗末な単行本は戦後の出版界を象徴していて、混乱期の中でのスタートだったことがただちにわかる。 (創刊号) (『文学的考察1946』) この二冊は…
●前衛、ということ ――今だとサヨクとかプロ市民とか、とにかく状況の変化について行けないオヤジ世代の思考回路の典型みたいに言われて、それがまたさっきから出ているように「団塊の世代」と直結されてくるわけですけど、これはまあ、いまの若い衆に特徴的なんですが、いまを生きている自分たちの〈いま・ここ〉と当時の団塊なら団塊がちょうど自分たちくらいの年代の頃との間に、具体的にどういう違いがあって、その中で生きていたということはどういう意識を持っていたんだ、ってことについての想像力をどう持ったらいいのか、それがいまひとつよくわかんないみたいですね。それはそういう意味で自分の見聞や体験から発した社会や歴史とい…
曇。早起き。 夢。自転車で帰宅する高校生のわたし。途中、神社の境内でおしっこをする。全然知らない道を自転車でゆくが、ナビゲーション機がなくてやべーぞと思う。道に見覚えがない、困ったなとペダルを漕ぎ続けるうち、わたしを探す女の子たちの声が遠くから聞こえてきて少しホッとする。NML で音楽を聴く。■シューマンの「クライスレリアーナ」 op.16 で、ピアノは多紗於里(NML)。多 紗於里 クライスレリアーナ シューマン名作選アーティスト:多 紗於里 ピアノLivenotes *cl*Amazon 晴れる。スーパー。昼から珈琲工房ひぐち北一色店。おいしいコーヒー。 『コレクション瀧口修造7』の続きを…
文学フリマ大阪10周年記念のスタッフ投稿リレー2つ目は副代表からです。今年のメインビジュアルを飾る三好長慶ゆかりの地を訪ねてきてくださいました。 1.移動中に見たもの ヨドバシカメラの通販で買った水色の日傘を手に、大阪は堺の南宗寺に向かいました。「なんしゅうじ」と呼びます。午前九時半に家を出ると、沸騰した泥をぶっかけられたような気分になります。重たいほどの太陽熱と道路の照り返しです。 天王寺で阪堺電車に乗りました。阪堺電車は大阪市内と堺市内で2路線の路面電車を運行しています。 その路面電車が素晴らしすぎて、このまま終点の浜寺公園まで車輪の音を聞きながらここに座っていたい……と思いました。昔、千…
今回『八月の光』を読むきっかけは、従兄にすすめられたことだったけれども、若いころからフォークナーに挑戦したいと思っていたのは、岡庭さんにフォークナー論があったからだ。岡庭さんは僕の文学の師匠だから、単独の作家論の著作のある椎名麟三、フォークナー、メルヴィル、萩原朔太郎、安部公房、田中小実昌、藤沢周平は落とすわけにはいかない。 岡庭さんは、1975年(33歳)の『フォークナー』と2009年(67歳)の『漱石・魯迅・フォークナー』とで、二度フォークナーを論じている。後者の方がだいぶわかりやすく論じているが、やはり若いころの端正で緊張感あふれる文体のほうが好きだ。 その全体を理解するためには、すくな…
2022年8月5日金曜日はれ 起床後、涼しい風が吹き抜けていく。肌寒さを感じる。 秋田魁新報に「人は生きていたときのように死んでいく(小沢信男)」と載っていた。どういう意味か。よく分からない。 //小沢 信男(おざわ のぶお、1927年6月5日 - 2021年3月3日)は、日本の作家。山下清の生涯を書いた『裸の大将一代記』で知られる。東京都港区出身。来歴・人物東京市(現東京都港区)新橋出身。1947年東京府立第六中学校(現東京都立新宿高等学校)を卒業。日本大学芸術学部に進学し、在学中に「新日本文学」に参加。「江古田文学」に掲載された「新東京感傷散歩」が花田清輝に認められる。卒業後、小説・詩・戯…
【最近読んだ本】 雑喉潤『三国志と日本人』(講談社現代新書、2002年)B 日本における三国志の受容を紹介した本。太平記や八犬伝への三国志の引用、吉川英治版における史実と創作の比較などを紹介してなかなか面白いが、読んでいるとただネタを並べて見せているだけな感じにはなってくる。 あと、花田清輝(1909-1974)が大好きらしいということはわかった。花田清輝のところだけやたら饒舌になるのだ。花田清輝など、いまの我々にはいまいちすごさがわからないが、やはり同時代の人(著者は1929年生)には相当なスターだったのだろう。森毅(1928-2010)も『いきあたりばったり文学談義』などでかなり語っていた…
1998年11月、思潮社から刊行された瀬木慎一(1931~2011)の評論集。装幀は夫馬孝。 目次 Ⅰ 戦後日本の運動――「夜の会」と「世紀の会」 野間宏と関根弘 安部公房 アンデパンダン展 勅使河原宏 海藤日出男 田中英光 瀧口修造 「夜の会」の瓦解 岡本太郎 前衛美術会との交流 花田清輝 一九五三年夏 Ⅱ アヴァンギャルドとリアリズム シュールレアリスム・短かった青春 今日のリアリズム 「戦後」の終焉と「戦後」以後 ブルトン『通底器』 桂川寛 自律と実験 Ⅲ 社会主義リアリズム論争 「真のレアリスムのために」――ピカソのスターリン肖像画とフージュロン批判 ソヴィエト芸術の混乱 表現主義論争…
清水高志さんが、松岡正剛さんと対談をしていた。 松岡さんの千夜千冊の連載がきっかけで素晴らしい本や作家に出会い、それによってこれまで自分の人生は彩られた場面もあった。鈴木大拙や鷲田清一、花田清輝を読んで、完全に理解はしていないけど、なにか自分の中に残っている(と信じられる)部分があって、人生は潤ったと思っていた。 メイヤスーの有限性の後でも、ヴァレリーのカイエも読んだ。丸山真男や柳田國男、西田幾多郎、朝永三十郎の名前も知っているし、何か読んだし、どういう人生だったかもwikipedia的な深さで知っているつもりだ。 伊藤亜紗さんや鞍田崇さん、星野太さん、小田原のどかさん、あるいはDJ ASAD…
目次 川崎市岡本太郎美術館 モニュメント「母の塔」 館内へ 「夜」と「まひるの生物」 彫刻作品は樹のモチーフが多い 根源にあるもの 番外編:ミュージアムショップ 関連:草間彌生とも通じるものがありそう? 関連書籍 ここ数年、仕事や勉強やいろんなことが忙しかったのと、コロナ禍で美術展にもあまりいけなくなってからというもの、なんとも長い間このブログを放置してしまった。 過去のエントリーを見ると、なんと1年半あまり・・・!汗汗汗 本当に久しぶりに筆を取るので、さぞ読みづらいこととは思いますが、何卒お許しください。 *** 川崎市岡本太郎美術館 さて、先日の連休、本当に久しぶりだったアートとの再会場所…
いずれにせよ、この共産党と純文学の純粋性(を見る視点)は、プロレタリア文学運動の挫折後に、徐々に変質していくほかはない。平野謙が、純文学変質説や、疎外された「負傷者」たちの「人民戦線」史観を模索していくゆえんである。もはや、このとき平野には、「その2」で見た「共産党とプロレタリア文学との関係が純文学と私小説との関係にほぼひとしいというアナロジーは、この時期において、アナロジーというよりむしろ同心円的なものとなってくる」。 だが、この「同心円」は、失調したとはいえ、あくまで共産党の純粋性や崇高性が前提のパースペクティヴである。逆にいえば、そもそも党に純粋性や崇高性を見出さない花田のような目には、…