「土を肥やす」と、昔の人は言った。“肥えた土が作物を育てる” という考え方がかつては一般的であったことの証明だ。土づくりのことである。 「苗半作」という格言があるように、育苗の出来が重要視された。だから、苗床の土(育苗用土、床土)をしっかり作って “肥土” と呼んだのである。 私の生家は、1960年代から葉タバコ生産者だった。3月上旬に1m近く残る雪をどけて家の前に踏み込み温床を作って育苗した。夏になるとせっせと葉を収穫し荒縄に一枚一枚差し込んで吊るして干した。その頃、ビニールフィルムが普及し、丸木や竹で骨組みして夏場だけの簡易の乾燥場を作った。 温床は稲ワラ束の間に米ヌカを挟んで踏み込み、そ…