「マルクス労働論とファシズムイデオロギーとの同一性」という虚妄 百木は論文の一項目を「物質代謝と全体主義」と題している。「最後に筆者の専門であるアーレント思想の観点からも付言しておこう」――このようにこのテーマにもっとも力をいれているのである。アーレントによる「マルクスの労働論を読み解くにあたって「物質代謝」が鍵概念となる」、となにやら自信ありげに百木は語り始めるのである。 百木はアーレントを引用しつつ言う。 「マルクスはかように労働を自然との物質代謝の観点から定義し、生産行為における労働と自然の一体化(合体)の契機を強調することによって人間の自由(自発性)と複数性を損なわせている。」「アーレ…