1952年京都市生まれ。英米文学者、翻訳家、アンソロジスト。 現在、京都大学大学院文学研究科教授。2004年に『乱視読者の英米短篇講義』で第55回読売文学賞随筆・紀行賞を受賞。
指将棋、詰将棋やチェスプロブレムでも有名で、指将棋では赤旗名人戦優勝、詰将棋では看寿賞7回受賞、チェスプロブレムでは国際チェス連盟(FIDE)から解答競技インターナショナル・マスターなどの実績がある。
本日に久しぶりで行きつけの本屋へといくことになりました。あれこれ気に なる本もあったりするのですが、たぶん、文庫以外は目にすることはできないで ありましょう。 ということで、本日に手にした文庫の話です。 今月の文庫本で、当方にとって一番のものは、早くも文庫になった読売文学賞・ 鮭児文学賞を受けた、次の小説であります。 ジュリアン・バトラーの真実の生涯 (河出文庫) 作者:川本 直 河出書房新社 Amazon ジュリアン・バトラーの真実の生涯 作者:川本直 河出書房新社 Amazon 今回の文庫化にあたっては、表紙カバーの装画をがらっとかえて、赤から白に であります。画家も宇野亜喜良さんになって…
昨日に届いた「本の雑誌」8月号は、特集が「2023年度上半期ベスト1」 というものでありました。そうか、今年も半分が過ぎたのでありますね。 「本の雑誌」の上半期ベストというのは、新刊に絞ってのことでありますが、 ほとんど新刊には縁のない生活をしていることもありまして、当方は上半期に 読んだものとか、心に残ったものを書きだすことにです。 本の雑誌482号2023年8月号 本の雑誌社 Amazon 順不同であります。 まずは、今年の上半期といえばの一冊です。 盤上のパラダイス (河出文庫 わ 10-1) 作者:若島 正 河出書房新社 Amazon このところ好調が続く河出文庫の一冊。若島正さんの別…
最近に購入して、いまもちびちびと読んでおりますのは、今月に河出文庫か ら新刊ででました若島正さんの「盤上のパラダイス」であります。 英文学の若島さんは、その一方で詰将棋作家としても著名でありまして、この 文庫新刊は、詰将棋に関するものです。 当方は将棋といえば、駒の動かし方を知っているだけでありますが、それで も若島さんの詰将棋ものということで、興味津々でした。 ページをめくりますと、当然のこと詰将棋の問題がでてくるのですが、そこの ところはスルーして、ちょっと風変わりな詰将棋愛好家の人物スケッチを楽しん でおります。 この本の元版は将棋愛好家に人気のあるものらしく、当方がこの文庫本を話題 に…
先日に購入した若島正さんの「盤上のパラダイス」を、待ち時間などにつまみ 読みすることになりです。 これは詰将棋にかかわる本となりますので、ページのあちこちに詰将棋の盤面 が登場することになります。当方は将棋は駒の並べ方と動かし方は知っていますが、 将棋をすることはなしであります。 亡父は付き合いのためでしょうか、囲碁と将棋のどちらもやっていたのですが、 とうとう当方は相手をすることはありませんでした。亡父は孫たちに期待したよ うでありますが、残念ながらの結果となりました。 若島さんは、どうして将棋をするようになったのかということが、この本には 書いてありました。 「将棋を教えてくれたのは祖父で…
注文してあったシステム手帳用のリフィールが入荷したと連絡をもらって いたので、本日は行きつけの本屋へといくことになりです。(まだその昔に 流行したシステム手帳を使っている人はいると思うのですが、このリフィール を購入するのに苦労することです。当方は能率協会のバインデックスの301 デイリープラン12時間というものに日記帳のような使っていますので、一日 一枚として、一年では365枚は使いますから、半年に一回くらいは注文する ことになりです。なかなか慣れた店員さんがいませんで、その都度、すこし 商品についての説明が必要となりで、このへんがちょっとさびしいことでありま す。まあ、それでも行きつけの店…
ランキング参加中読書←よくわからないけど参加してみることにしました ◆『澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集』 『怪奇小説傑作集4』(以下『怪奇集4』)の収録作と『ふらんす怪談』が合わさった本らしく、再編集本といった感じなのかな。『怪奇集4』の方は既読なので、そちらの作品は再読。 「呪縛の塔」マルキ・ド・サド ヒロイックファンタジーの先駆けような作品という全体の印象は変わらないのだが、今回はそのスケールの大きさにインパクトを感じた。それほど昔でもないのだが、その時には何を読みとっていたのかなあ。 「ギスモンド城の幽霊」シャルル・ノディエ こちらにいたっては以前読んだ記憶が全くといっていいほど消えている(…
たまには誰もわからない話でもするか(え?大概いつも話題の範囲は狭いんじゃないかって?まあそうですな)。 当ブログ主は一浪して大学に入学した。 浪人の時の話をしたい。 浪人した理由もみっともないもので、志望学部を変えてやり直したいと親にねだったというわけ。 中高一貫の私立に通わせてもらって十分準備もしてきたのに、高3で志望が最後までちゃんと定まらなかったという。ろくでもないもんだね。 一番興味が持てたのがSFで、高校生のうちにプロやのちにプロになる方々とも知り合うことができたにも関わらず、そちらの道を早々に断念したというのも少しは影響した。断念した理由は、読書スピードが圧倒的に遅いことと英語力を…
なんとなく数年来(苦笑)たまっていた雑誌などを消化することが多いです。雑誌は全部読むのは大変なので、創作などそこそこ読んだものという感じ(それから、感想も随分前に読んだものが結構含まれてる)。 ◇群像 2019年1月号 ○フィクション 「命日」瀬戸内寂聴 無論著名な作家だが、小説を読むのは初めて。明らかに自伝的な内容で、それを別な人物の視点で書かれている形式。短いこともあるが、意外とすんなり読ませる。とても100歳近い人の作品とは思えないね。ちょっと羨ましい。 「返信を、待っていた」笙野頼子 身近な日常をベースに、現代をリアルタイムで描写していく形式。社会の背景に潜む欺瞞を余さずとらえる眼差し…
『紙魚の手帖』vol.16 2024 APRIL【駅×旅】「きみは湖」砂村かいり ――毎年同じ日に同じ場所で購入された切符。いなくなった恋人が集めていたそれを頼りに、わたしは「湖に浮かぶ駅」に降り立つ(惹句より)「そこに、私はいなかった。」朝倉宏景 ――高3の夏、真央の応援にたどり着けなかった「私」。彼の一軍初登板の今日、再び西に向かう(惹句より)「雪花の下」君嶋彼方 ――突然、子供を連れて実家に帰ってしまった夫と、夫の兄。翠と義姉は、それぞれの夫を追ってふたり北海道へ(惹句より)「明洞発3時分、僕は君に撃たれる」額賀澪 ――不倫報道から一年後、ソウルの街で再会した二人と、その跡を追う週刊誌記…
H・G・ウェルズ『盗まれた細菌・初めての飛行機』 いのり。『勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女』 神沼三平太、若本衣織、蛙坂須美『怪談番外地 蠱毒の坩堝』 中村光夫編『吉田健一随筆集』 河﨑秋子『颶風の王』 河﨑秋子『鯨の岬』 ジョン・スラデック『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』 クリストファー・プリースト『落ち逝く』 ボルヘス『シェイクスピアの記憶』 エーリッヒ・ケストナー『独裁者の学校』 仙田学・作、田中六大・絵『トイレ野ようこさん』 H・G・ウェルズ『盗まれた細菌・初めての飛行機』 盗まれた細菌…
SFの気恥ずかしさ 作者:トマス・M・ディッシュ 国書刊行会 Amazon 『歌の翼に』『いさましいちびのトースター』の奇才トマス・M・ディッシュのSF評論集、ついに登場! SFの限界と可能性を論じた名講演「SFの気恥ずかしさ」をはじめ、新世代SF作家を批判してジョージ・R・R・マーティンに反論された伝説的評論「レイバー・デイ・グループ」、書評家として燃やすべき本について舌鋒鋭く語った「聖ブラッドベリ祭」、ディック作品に対する愛にあふれる『偶然世界』序文、そしてエイリアンに誘拐された体験記の書評が奇想天外な展開を見せる「ヴィレッジ・エイリアン」など、技巧とユーモアに満ちた書評・エッセイを集成。…
『紙魚の手帖』vol.15 2024 FEBRUARY【創立70周年記念企画 エッセイ「わたしと東京創元社」】「創立70周年記念企画 エッセイ わたしと東京創元社」笠井潔、北村薫、田口俊樹、辻真先、エドワード・ケアリー 「矢吹シリーズ全十作が黄色の背表紙で揃うところを早く見たいものだ」と他人事みたいに書いているのが可笑しかったです。 「藤色の鶴」北山猛邦 ★☆☆☆☆ ――3つの時代で起きた消失事件の周辺には、「藤原」という少女の姿があった―― 千年の時を越える祈りの物語(袖惹句) 陰陽師の折り紙がかつては式神となり未来ではSFとなり現代では奇跡をもたらします。 「とある日常の謎について」今村昌…
昼:コンビニ飯夜:鶏鍋の残りをアレンジしたカレーうどん(連れ作) ホテルでまったく寝付けず、寝不足のまま客先へ。コンディションは最悪なのに、ほとんど一日中クライアントとずっと一緒だったのもあいまって疲労感はすさまじく、帰りの新幹線は半分以上を寝て過ごした。目を覚ましたときには名古屋をとっくに過ぎており、変な角度で寝ていたせいで首を痛めて、そこから再び眠りには戻れなかったので、読むのがつらくて気が進まずにいた『ロリータ』を読んでいた。帰宅したのが午後11時すぎ。連れもその15分ほど前に帰ってきたばかりで、どうやら忙しい日だったらしく、夕食はもう外で済ませようかと話していたのだが、家のドアを開けた…
ウラジーミル・ナボコフ 秋草俊一郎・諫早勇一・貝澤哉・加藤光也・杉本一直・沼野充義・毛利公美・若島正 訳 『ナボコフ全短篇』 作品社 ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)の『ナボコフ全短篇』を読了しました。生前に発表された作品、また死後に公刊された作品も含めて、ナボコフの68篇の短篇が編年体で並べられた作品集です。ナボコフを研究するロシア文学者と英文学者が総力を結集して訳出したという印象の「力作」翻訳作品でもあります。あまりよく覚えてはいないのですが、5~6年ほどかけて少しずつ読み進めていました。 ふとした瞬間に立ち上がってくる生の実相を、小説というかたちで表現することを追求するナボコ…
三が日に、昨年の手帳などを開いて、振り返りをすることにです。 見たもの、読んだもの、聴いたものなどから印象に残ったものをリスト化して みることにです。 まずは本の話題からですが、今年に読んだものということで、出版年は今年に 限りません。順不同となります。 ・ 失われた時をもとめて マルセル・プルースト 読もうと思って半世紀を超えました。井上究一郎さんの訳で文庫と単行本の 二セット購入してだめでしたが、岩波文庫でやっと読むことができました。 これを読めたのは7月に突発性難聴で入院したことによりますが、長編小説を 読む環境としては入院はよろしいかもしれません。生死にかかわるものはいけ ませんが。 …
今月も大映映画をつづいて観た。主に若尾文子出演作。映画: ●『ゴジラ-1.0』(2023)山崎貴:脚本・VFX・監督(2回観た。1回はIMAX) ●『パトリシア・ハイスミスに恋して』(2022)エヴァ・ヴィティヤ:脚本・監督(2回観た) ●『枯れ葉』(2023)アキ・カウリスマキ:脚本・監督Book: ●『アナーキスト人類学のための断章』(2004) デヴィッド・グレーバー:著 高祖岩三郎:訳 ●『ロリータ』(1955) ウラジーミル・ナボコフ:著 若島正:訳 ●『ロリータ、ロリータ、ロリータ』(2007) 若島正:著ホームシアター: ●『L.A.コンフィデンシャル』(1997)ジェイムズ・エ…
ロリータ、ロリータ、ロリータ作者:若島 正作品社Amazon 日本における、ナボコフの『ロリータ』翻訳の決定版を出された若島正氏による、いわば「翻訳者の視点から語る『ロリータ』論」という本、なのだが、いわゆる「作品論」というのではなく、「言語の魔術師」たるナボコフの、その『ロリータ』の中にちりばめられた「言葉の罠」とでもいうものを、あたかも「謎解き」のように解いていくという本。 そんなものは「作品論」ではないではないか、というものではなく、そのように解いていくことが自然とそのままが『ロリータ』論になっている、というもの。『ロリータ』とはそういう作品であり、ナボコフとはそういう作家なのである。 …
2023年最後の日。今日はとなり駅の映画館に、アキ・カウリスマキ監督の新作『枯れ葉』を観に行くのだ。映画の上映が朝の回は9時45分からとちょっと早いので、9時ぐらいにニェネントくんにおやつを出してあげてから家を出た。 ついさっきまで雨が降っていたようで、道路はしっかり濡れていたし、まだまだまばらにがんばって落ちてくる雨粒もあり、ときどき道路の水たまりに円を描いていた。天気予報は雨は9時ぐらいまでしかつづかないと言ってくれたので、信用して傘は持たないで家を出た。 となり駅に着いてみると、自宅駅あたりよりは残った雨ががんばっていて、皆傘をさしていた。映画館までは外に出ないで行けるのでわたしには問題…
<本の五つ星(順番は読了順)> 街とその不確かな壁(村上春樹)4/25読了 ワイン知らず、マンガ知らず(エティエンヌ・ダヴォドー)7/11読了<本の四つ星(順番は読了順)> じゃむパンの日(赤染晶子)1/23読了 リバー(奥田英朗)3/21読了 盤上のパラダイス(若島正)6/12読了 方舟(夕木春央)6/29読了 黄金比の縁(石田夏穂)7/18読了 冬のUFO・夏の怪獣【新版】(クリハラタカシ)9/4読了 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ(川上弘美)11/11読了昨年『我が友、スミス』を知って、その後の石田夏穂作品を今年は追いかけた。 このミス1位の『可燃物』(米澤穂信)は年始から…
2023年も終わりが近づいてきたので、下半期に読んだ本のなかから良かったものを10冊選んでみました。ノンフィクション5冊、フィクション5冊です。*1 全体的に分厚いノンフィクションを読んでいる時間が長くて、小説はやや少なめでした。 ノンフィクション 伊藤憲二『励起 仁科芳雄と日本の現代物理学』(みすず書房) 仁科芳雄の本格評伝。ベストはこれ。感想はこちらに。 kinob5.hatenablog.com イレネ・バジェホ『パピルスのなかの永遠 書物の歴史の物語』(訳・見田悠子、作品社) スペインの古典文献学者による書物の歴史。体系的な歴史というよりは、ギリシアとローマを起点にして縦横無尽に語るよ…
『S-Fマガジン』2024年2月号No.741【特集 ミステリとSFの交差点】「ここはすべての夜明けまえ」間宮改衣 第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。編集後記によれば「どんな物語なのか、ジャンルも、あるいは小説なのかどうかさえも、事前情報が何もない状態で遭遇してほしい作品」ということで、紹介文も解説もあらすじも一切ありませんが、それで読もうという気持ちになれるほど今のSFマガジン編集部を信頼していません。 「detatch」荻堂顕 特集の一篇。刊行予定の長篇プロローグ。 「魂婚心中」芦沢央 ――愛は死を超えて――永遠の絆で結ばれたい相手が、あなたにはいますか?(袖惹句) 特集の一篇。…
今日は、となりの市の図書館へ本を借りに行く。もうすっかり図書館で本を借りることをしなくなってしまっているし、調べるともう4年ほどは図書館を利用していない。それに、今日行こうとする図書館で本を借りるのは初めてのことだ(以前はウチからその図書館とは反対方向に歩いた、A市立の図書館を主に利用していた)。 先週、となり駅の映画館で映画を観た帰りにその図書館の場所を確かめて、そこからウチまで歩いて帰ったので道筋はわかっている(つもり)。先週は帰りに寄り道もしたのでたしかな所要時間はわからないが、わたしの思うところでは、50分まではかからないだろうと思っている。じっさい、A市の図書館にしても歩いて行くと4…
ロリータ (新潮文庫)作者:ウラジーミル ナボコフ新潮社Amazon 前にこの『ロリータ』を読んだのはもう6年も前で、それから今までのあいだにわたしは記憶障害も起こしていて、『ロリータ』の内容は誰もが読まなくても知っているぐらいのことしかわかっていなかった。つまり、ほとんど「初読」という気分で読んだわけだが。 この小説はその段階ごとに、まったく異なる展開をみせるわけで、それを大きく分ければ 〇ジョン・レイ・ジュニア博士による「序」 〇書き手のハンバート・ハンバート(以下H・H)の少年期のリヴィエラ時代(アナベルとの出会い) 〇成人したH・Hがアメリカに渡り、ドロレス・ヘイズ(ロリータ)に出会う…