ふる里を 峯の霞《かすみ》は 隔つれど 眺《なが》むる空は同じ雲井か 須磨の地で京に残してきた人たちのことを考え 悲しい気持ちになる源氏🪷 〜住みなれた都の方を 峰の霞は遠く隔てている。 わたしが悲しい気持ちで眺めている空は 都であの人が眺めているのと同じ空なのだ 【第12帖 須磨 すま】 ふる里を 峯の霞《かすみ》は 隔つれど 眺《なが》むる空は同じ雲井か 総てのものが寂しく悲しく見られた。 隠栖《いんせい》の場所は行平《ゆきひら》が 「藻塩《もしほ》垂《た》れつつ侘《わ》ぶと答へよ」 と歌って住んでいた所に近くて、 海岸からはややはいったあたりで、 きわめて寂しい山の中である。 めぐらせた…