『倭人伝を読みなおす』 森 浩一著 森さん最晩年、渾身の力が入った書である。「八一歳になって倭人伝の問題点を自分なりにまとめられたのは人生の幸運といってよかろう。」と書いておられる。 陳寿の倭人伝は、ほぼ同時代史料で史料的価値は高い。「倭国伝」でなく「倭人伝」であるのはなぜか。陳寿は分裂状態にある倭国を書いたので,それは「倭国伝」ではなく「倭人伝」になった。 この本で森さんははっきりと邪馬台国九州説を表明されている。誤解のないようにいえば、九州邪馬台国東遷説である。道程表の矛盾などについてはどう説明がされたか気になる人は読んでいただくといい。 女王国と隣接する狗奴国の争いに苦慮した魏は、帯方郡…