先日久しぶりに漱石の『吾輩は猫である』を読んだ。実に五十余年ぶりである。一度目は、たしか高校生の頃に夏休みの宿題で感想文を書くために読んだような覚えがある。今回読んで感じたのは、こんなに面白い小説だったかしら、ということだった。「猫」はアララギ同人の高浜虚子に依頼されて執筆し、アララギに掲載されたものだったように記憶するが、その「猫」が面白いと評判をよび、続編が次々に書かれたようだ。わたしが好きなのは、初めの頃の「猫」である。その「猫」二の章に次のような文章がある。… 猫の観察として読んでみて。" しばらくすると下女が来て寒月さんが おいでになりましたという。この寒月という男は矢張り主人の旧門…