いはけなき 鶴《たづ》の一声聞きしより 葦間《あしま》になづむ 船ぞえならぬ 若紫の祖母 北山の尼君に by 源氏の君🌹 〜あどけない 幼い鶴のような(姫君)の 一声を聞いてからというもの、 私は 葦の間を進みあぐねている舟のように、 言うに言われぬ思いです。 🪷第5帖 若紫🪷 「それは姫君は何もご存じなしに、もうお寝《やす》みになっていまして」 女房がこんなふうに言っている時に、向こうからこの隣室へ来る足音がして、 「お祖母《ばあ》様、 あのお寺にいらっしった源氏の君が来ていらっしゃるのですよ。 なぜ御覧にならないの」 と女王は言った。 女房たちは困ってしまった。 「静かにあそばせよ」 と言…