のぼりぬる 煙はそれと分かねども なべて雲井の 哀れなるかな 愛娘を失い 悲嘆に暮れる大臣を見るに忍びなくて 車中から空を眺めて思った源氏の歌🪷 〜空に上った煙は 雲と混ざり合ってそれと区別がつかないけれど おしなべて どの雲もしみじみと眺められることです。 【第9帖 葵 あおい】 「こんな老人になってから、 若盛りの娘に死なれて無力に私は泣いているじゃないか」 恥じてこう言って泣く大臣を悲しんで見ぬ人もなかった。 夜通しかかったほどの大がかりな儀式であったが、 終局は煙にすべく 遺骸を広い野に置いて来るだけの寂しいことになって 皆 早暁に帰って行った。 死はそうしたものであるが、 前《さき》…