鉄道において列車を牽引する機関車のうち、蒸気機関を動力源とする鉄道車両。汽車。英語のSteam Locomotiveを略してSLと呼ばれることが多い。
ボイラーで発生させた蒸気によりシリンダ内のピストンを動かし、動輪にクランクを介してつないだ主連棒を前後させることで動輪を回転させる、外燃機関。通常は石炭を燃料とするが、コークス、重油、薪などが使用(あるいは併用)される場合もある。
その構造上、車体の多くの部分を円筒形の大型ボイラーが占めることになり、結果、他の箱型の鉄道車両にはみられない独特の形状となる。多量の石炭と水を使用する長距離運転用には、ボイラーと運転台を載せた機関車本体の後ろに炭水車(テンダ)をつなぐテンダ式機関車が用いられる。短距離の運転や入換用には、ボイラーの横や運転台の後ろに水や石炭を積むタンク式が用いられる。
鉄道の初期においては全ての列車が蒸気機関車により運転された。日本語で「汽車」とは蒸気機関車のことだが、今も地域や世代によっては列車のことを全て汽車と呼ぶ(あるいはJRのことを汽車、市電や私鉄のことを電車と呼ぶ)習慣が残っているのは、この時代の名残だろう。
しかし、蒸気機関車はそのエネルギー効率の悪さやトンネル内での煤煙の問題などを理由に20世紀初頭から次第に電気機関車やディーゼル機関車、電車、気動車などに取って代わられていき、日本国鉄では1976年*1を最後に全ての蒸気機関車の使用が終了した。
一線から退いた蒸気機関車ではあるが、その後もSLの復活を願う声は強く、国鉄では1979年から観光用のSL「やまぐち号」の運転を開始した。JR化後は山口線のあるJR西日本のほか、JR北海道、JR東日本、JR九州でもSLが復活した。
また、私鉄でもSLを運転しているところがある。中でも大井川鐵道は1976年からSL運転を行っている老舗であり、純粋な旧型客車と蒸気機関車の組み合わせで運行しているのは現在ではここだけである。
現在、日本国内で定期的に蒸気機関車が運転されているのは以下の路線。(運転日・運転時刻等は最新の時刻表を参照のこと)
1972年、鉄道創業100年を記念して京都市に梅小路蒸気機関車館が開館した。同館では旧梅小路機関区の扇形庫に並んだ実物の蒸気機関車に触れられるほか、構内を往復するSL列車に乗車することもできる。