[遠山茂樹] 遠山茂樹著作集第8巻所収の「津田博士の天皇制論」は『津田左右吉全集』28巻月報(1988.12)に寄せたたもの。津田が敗戦直後の『世界』1946年3、4月号に発表した「日本歴史の研究に於ける科学的態度」と「建国の事情と万世一系の思想」を取り上げ、大方、高く評価しつつ、後者の末尾での天皇制擁護が、情緒に訴える人情論によるものでしかなかったことを、それまでの津田の学問的態度を放棄したものとして批判している。しかし、唯物史観に立つ遠山の批判は決して紋切り型ではないことは、次の末尾の文章にもあらわれている。 《〔二つの〕論文発表以後、月を経るにしたがってエスカレートする天皇制擁護と反マル…