【源氏物語84 第六帖 末摘花4】 〈古文〉 おのおの契れる方にも、あまえて、 え行き別れたまはず、一つ車に乗りて、 月のをかしきほどに雲隠れたる道のほど、 笛吹き合せて大殿におはしぬ。 前駆なども追はせたまはず、忍び入りて、 人見ぬ廊に御直衣ども召して、着替へたまふ。 つれなう、今来るやうにて、 御笛ども吹きすさびておはすれば、 大臣、例の聞き過ぐしたまはで、 高麗笛取り出でたまへり。 いと上手におはすれば、いとおもしろう吹きたまふ。 御琴召して、内にも、 この方に心得たる人びとに弾かせたまふ。 中務の君、わざと琵琶は弾けど、 頭の君心かけたるをもて離れて、 ただこのたまさかなる御けしきのな…