福原には、頼朝謀叛の兵を起す、との情報が絶え間なく流れこんでくる。 彼のもとに集る源氏の兵力もその数を刻々増してゆく情勢である。 公卿会議が急いで開かれ、敵の兵力が増さぬうちに一日も早く追手を、 という意見が一致して採られ、 大将軍に小松の権亮少将維盛《ごんのすけしょうしょうこれもり》、 副将軍に薩摩守忠度《さつまのかみただのり》が命じられ、 侍大将の上総守忠清《かずさのかみただきよ》が先陣ときまる。 その勢合せて三万余騎である。九月十八日が新都出発の日である。 大将軍の維盛は生年二十三、容姿端麗な青年であったが、 重代のきせなが唐革縅《からかわおどし》の鎧《よろい》をかつがせ、 自分は赤地の…