訓読 >>> 1194紀の国の雑賀(さひか)の浦に出(い)で見れば海人(あま)の燈火(ともしび)波の間(ま)ゆ見ゆ 1195麻衣(あさごろも)着ればなつかし紀の国の妹背(いもせ)の山に麻(あさ)蒔(ま)け我妹(わぎも) 要旨 >>> 〈1194〉紀伊の国の雑賀の浦に出てみたら、海人のともす漁火(いさりび)が波間から見える。 〈1195〉麻の衣を着ると、庶民的な懐かしい思いがする。紀の国の妹背の山に、そんな思いになる麻の種を蒔けよ、我が妻。 鑑賞 >>> 紀伊国への行幸に従駕した藤原卿の歌。「藤原卿」とは誰を指すのかについては、神亀元年(724年)10月の紀伊行幸の時、藤原房前(ふささき)または…