三条の宮におはします頃、五日の菖蒲の輿などもて参り、薬玉参らせなどす。 若き人々、御匣殿など、薬玉して姫宮・若宮に着け奉らせ給ふ。いとをかしき薬玉ども、ほかより参らせたるに、 ……青稜子といふものを持て来たるを、青き薄様を、艶なる硯の蓋に敷きて、「これ、笆越しにさぶらふ」とて、まゐらせたれば、 みな人の花や 蝶やといそぐ日も わが心をば 君ぞ知りける 中宮定子 この紙の端をひき破らせたまひて書かせたまへる、いとめでたし 清少納言 (枕草子 239) 一条天皇と藤原定子。『枕草子絵巻』より 意訳 世間の人が皆、花や蝶やといそいそと美しいものに浮かれる日も、あなただけは私の本当の気持ちを知ってくれ…