【平家物語 第2巻 小松教訓③】 重盛は、父を諫めて、中門から出てきたが、 清盛の承諾を得たものの、 まだ何かと不安であったから、侍達を集めると、 「たとえ清盛公のご命令だからといって、 大納言を殺すような事はするな。 清盛公は、気の短いお人だから、腹立ちまぎれに、 かっとなっては、後でいつも後悔なさる。 お前達も、間違った真似《まね》をして、 あとで、この私にどのような目にあわされても、 恨むでないぞ」 とじろりと侍達を見廻したので、 一同、恐ろしさに震え上った。 重盛は、その中に、難波経遠、瀬尾兼康の二人を見つけると、 ずかずかと側に寄り、 「さても、経遠、兼康、今朝方、 成親卿に対する振…