大島徹也「1980年代の日本の抽象絵画」(『美術フォーラム21』第30号、2014年11月)。 1980年代の日本の抽象絵画について考察する。アメリカにおいては、同時期ニューペインティングと呼ばれるジュリアン・シュナーベルをはじめとした傾向が席巻し、抽象絵画は主役とは言えなかった。 しかし日本では松本陽子、辰野登恵子、中村一美ら抽象画家が台頭する。彼らが絵画に向き合うとき、50年代の抽象表現主義を参照し、フォーマリズム的な関心から絵画の構造、すなわち絵画空間を問い直していった。そのとき、藤枝晃雄のフォーマリズム批評が大きく作用していた。 もの派との連続性で80年代の抽象絵画の論考をこれまで読ん…