行くさきを はるかに祈る 別れ路《ぢ》に たへぬは老いの 涙なりけり by 明石の入道 〜姫君の将来が幸福でありますようにと、 祈る別れに際して こらえきれず流れ続けているのは 年老いた私の涙であるよ 明石の姫君たちが京に出発する日 明石入道は涙を隠しきれない🍂 【第18帖 松風 まつかぜ】 「行くさきを はるかに祈る 別れ路《ぢ》に たへぬは老いの 涙なりけり 不謹慎だ私は」 と言って、 落ちてくる涙を拭《ぬぐ》い隠そうとした。 尼君が、京時代の左近中将の良人《おっと》に、 「もろともに 都は出《い》でき このたびや 一人野中の 道に惑はん」 と言って泣くのも同情されることであった。 信頼を…