作家、英米文学翻訳家、アンソロジスト。1955年、青森県生まれ。青森県鰺ヶ沢高等学校卒業。
編・共訳書に、『怪奇小説の世紀』全三巻(国書刊行会)、『英国短篇小説の愉しみ』全三巻(筑摩書房)、訳書にアントニイ・バークリー『第二の銃声』(国書刊行会)、A・E・コッパード『郵便局と蛇』(国書刊行会)、『エドガー・アラン・ポー短篇集』(ちくま文庫)などがある。 また、2002年、『世界の果ての庭』で、日本ファンタジーノベル大賞を受賞。
昨年のブックフェアで話をする機会があった、西崎憲さんの小説を読んだ。話と言っても、翻訳者が自ら本を売るという企画で西崎さんが編んだアンソロジーを買ったときにサインしてもらう間に、少しばかり会話を交わした程度なのだが。西崎さんの翻訳は読んだことがあるが、小説は初めてだ。「本の幽霊」という短編集。2022年にナナロク社から刊行されていて、全120ページに6編が収録されている。ほとんどが本がらみの話の、風変わりな作品集になっている。 本の幽霊 作者:西崎憲 ナナロク社 Amazon タイトルとなっている「本の幽霊」。主人公がイギリスから取り寄せた本は、時に現れ時に姿が見えなくなる本だった、という話。…
机の上には、図書館から借りている「中村邦生小説選 月光の仕事」が のっています。たぶん、かなり少ない読者向けに刊行されたものでしょう。 当方が通う図書館では、誰も借りる人がいなくて、黄色の背表紙が淋しげで ありました。 こんな立派な本にして、知名度の低い作家の作品集を刊行して送り出す というのが、国書刊行会の仕事です。売れるものは、利にさとい他の出版社 が出すのですから、何十年もかかってやっと売り切るようなものに取り組む ことになりです。 月光の仕事: 中村邦生小説選 作者:中村邦生 国書刊行会 Amazon 国書刊行会が送り出した作家さんは、数多くいるはずですが、その代表の 一人は山尾悠子さ…
12月の最初の日に申し訳ないのだが、紹介するのは「7月の本」。国書刊行会で刊行中の「12が月の本」シリーズの一冊だ。気候変動の影響により秋がなくなったので7月も少し前、というのは単なる言い訳で、経済力と読書の余力のなさが理由で全巻購入の雲行きはあやしく、自分の誕生月の「6月の本」は読んだものの、無理ならせめて家族の誕生月くらい読んでおこうと「7月の本」を手に取った(当人が読んでくれるのを期待しつつ)。 7月の本 (12か月の本) 作者:長野まゆみ,川端康成,尾形亀之助,岡本綺堂,志賀直哉,海野十三,穂村弘,スティーヴン・ミルハウザー 国書刊行会 Amazon 編者は、西崎憲さん。先日梅屋敷ブッ…
ヘミングウェイ短篇集 (ちくま文庫 ヘ 11-1) 作者:ヘミングウェイ 筑摩書房 Amazon 『ヘミングウェイ短篇集』ヘミングウェイ著 西崎憲編訳を読む。 ヘミングウェイの文体が好きだった。短い期間、新聞記者をしていて、そのときにできた文体だそうだ。簡潔、ハードボイルド、乾いた短いセンテンス。がんばってペーパーバックでも読んでみた。サリンジャーよりは理解できた(と思う)。何篇かの梗概、感想などを。 『清潔で明るい場所』カフェの常連の老人。酔い過ぎると勘定を忘れるのでふたりのウエイターは要注意。老人は「先週、自殺」を試みたとウエイターがもうひとりに囁く。こぎれいなカフェに来るさまざまな客。ウ…
読み始めたばかりだが、6月に入ったので「6月の本」を紹介したい。国書刊行会が「12か月の本」として、ひと月をテーマに小説、詩歌、随筆を集めたアンソロジーだ。3月に、「4月の本」「5月の本」「6月の本」と刊行され、今後も3カ月分ずつ刊行されて、年末に全巻完結の予定だそうだ。昔なら、思い切って12カ月分を予約したはずだが、今回は自分の誕生月である「6月の本」のみを購入した(残りは懐具合で)。編者は、西崎憲さん。小説家であり、音楽家でもある。そして、翻訳もこなす。 6月の本 (12か月の本) 作者:堀辰雄,谷崎潤一郎,西崎憲,北園克衛,安部公房,マーク・トウェイン,石川欣一,中谷宇吉郎,茨木のり子,…
2024年6月26日-7月2日 ・横山秀夫『半落ち』 ・西崎憲『ヘディングはおもに頭で』 ・今村章生『餞』 ・佐田三季『クライ、くらい夜の終わりに』 ・ジェイムズ・P・ホーガン(池央耿訳)『星を継ぐもの』 ・伊坂幸太郎『夜の国のクーパー』 ・稲垣理一郎、村田雄介『アイシールド21』1-37巻 以下コメント・ネタバレあり
著者:西崎憲出版社:ナナロク社 ページ数(115P)が少ないわりに装幀が贅沢な作りな短編集。 図書館でみかけて気になったので読んでみたが、思っていたのと違い どの作品も劇的に盛り上がるわけでもなく、本に関わるちょっと不思議なことや 日常の断片の記憶がとりとめもなく描かれる。 読み心地は悪くない。 自然とゆったり味わうように読めた。 内容と関係が無い挿絵のページが差し込まれていたり、 そもそもその絵にいたずら書きのようなものまである。 それらのデザインや手触りなどは「銀河の片隅で科学夜話」を思い出す。 ファンタジー色が最も強い「砂嘴の上の図書館」が一番好きな作品。 「一冊の本のなかにはすでに無限…
『本の幽霊』西崎憲著を読む。 本や本に関連する不思議な6つの短篇集。最近は本への執着もなくなってしまったが、10代から20代の頃の自分を思い出させてくれる。文学少年や文学少女とかは、もはや死語になったのだろうか。何篇か紹介。 『本の幽霊』本のデザインを生業にしている「ぼく」は、長年探していた本をロンドンのとある古書店のカタログで見つけ、ネット通販でゲットした。やっと届いた本には「夏のあいだはその窓を開けてはならない」と書いてあった。そして本は消えた。なぜかカタログにも載っていなかった。似たような体験をした人は多いだろう。ぼくも、本の迷子や神隠し、家出、失踪、拉致などに遭って悲しい思いをしたこと…
あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集 (ブックスならんですわる) 作者:ジーン・リース 亜紀書房 Amazon 『あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集』ジーン・リース著 西崎憲編 安藤しを ほか訳を読む。 作者は旧英国領ドミニカ国に生まれのイギリス人。ロンドンの女子高に入学するが、周囲は奇異な目で見る。アクセントがおかしい。ひそひそ。植民地から来たの、どおりで。「きみはイングランド人じゃない、汚い植民地人だ」(『あの人たちが本を焼いた日』より)。 彼女ははじめ素朴な疑問を抱くが、それ以降同じような数々の嫌な体験をするたびに、これがヨーロッパなのだと思うようになる。先進国、文…
郊外のフェアリーテール キャサリン・マンスフィールド短篇集 (ブックスならんですわる 02) 作者:キャサリン・マンスフィールド 亜紀書房 Amazon 『郊外のフェアリーテール キャサリン・マンスフィールド短篇集』キャサリン・マンスフィールド著 西崎憲編訳を読む。 作者は自分が女性であることに対して優越感と劣等感を同時にかなり込み入って有している。ジェンダーギャップ、社会階層ギャップ、ミサンドリー(男性嫌悪または男性蔑視)などが根底にあるような。一時期流行った言葉で延べるなら、こじらせ女子系。元祖わきまえない女子系。 ヴァージニア・ウルフとは好敵手だったとか。当時の(いまでもか)作家=男性と…