作家、英米文学翻訳家、アンソロジスト。1955年、青森県生まれ。青森県鰺ヶ沢高等学校卒業。
編・共訳書に、『怪奇小説の世紀』全三巻(国書刊行会)、『英国短篇小説の愉しみ』全三巻(筑摩書房)、訳書にアントニイ・バークリー『第二の銃声』(国書刊行会)、A・E・コッパード『郵便局と蛇』(国書刊行会)、『エドガー・アラン・ポー短篇集』(ちくま文庫)などがある。 また、2002年、『世界の果ての庭』で、日本ファンタジーノベル大賞を受賞。
郊外のフェアリーテール キャサリン・マンスフィールド短篇集 (ブックスならんですわる 02) 作者:キャサリン・マンスフィールド 亜紀書房 Amazon 『郊外のフェアリーテール キャサリン・マンスフィールド短篇集』キャサリン・マンスフィールド著 西崎憲編訳を読む。 作者は自分が女性であることに対して優越感と劣等感を同時にかなり込み入って有している。ジェンダーギャップ、社会階層ギャップ、ミサンドリー(男性嫌悪または男性蔑視)などが根底にあるような。一時期流行った言葉で延べるなら、こじらせ女子系。元祖わきまえない女子系。 ヴァージニア・ウルフとは好敵手だったとか。当時の(いまでもか)作家=男性と…
ゆみに町ガイドブック 作者:西崎 憲 河出書房新社 Amazon 『ゆみに町ガイドブック』西崎憲著を読む。 ゆみに町に住む小説家・翻訳家の「わたし」(女性)。何やらコンピュータ・プログラミングでゆみに町に関係している「雲マニア」。クリストファー・ロビンを探す、なぜか「片耳のプーさん」。彼ら(彼女ら)の話が重層的に展開する。 浦安方面にある王国となぜか似た名前の「デステニィーランド」。それは、「わたし」の脳内にある町。そしてゆみに町の影の町でもある。 中心のような周縁 周縁のような中心。彼岸と此岸。旧市内と新市街。過去 現在 未来が 混在するような町。この風景は本物なのか 偽物なのか。出てくる人…
おすすめ度: ★★ (3つ星が最高点) 全ロック史 作者: 西崎憲 出版社/メーカー: 人文書院 発売日: 2019/02/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る タイトル通り、ロックの創成期から現代までを総括した全ロック史。年表、ミュージシャン・バンド名、アルバム名などの索引もしっかり整備され、読み物としてだけでなく辞書としての機能も兼ね揃えている。クラシックやジャズはこうした通史や概説書の類が多数出版されているが、ロックの場合は極めて珍しいので、貴重な一冊といえる。 本文だけで400ページを越え、その情報量の多さに圧倒される。執筆に5年以上も費やしたと「あとがき」に書かれてい…
ゆみに町ガイドブック 作者:西崎 憲 河出書房新社 Amazon 「ゆみに町」に暮らす小説家がいて、彼女は物語というよりはその枝葉や表面の部分にある詩、風景や光景みたいな断片的なもののほうを好んでいる。その彼女が暮らすゆみに町のことや、彼女の生活歴、そしてゆみに町で見聞きした種々のエピソードが語られていく。 同時に、このゆみに町には「雲マニア」という、「記憶子」を操作して町の形を整える仕事をしている人がいて、その「雲マニア」が仕事上で横着して起こした失敗(→ゆみに町には深刻な不具合が……)、それと小説家の空想の世界「ディスティニーランド」にて虐殺から逃げつつ「クリストファー・ロビン」をさがす「…
毎週日曜日は、この一週間に書評に取り上げられた本を紹介しています。(書評の内容については各誌をご覧ください。) 今週の書評本 ◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数タイトル 著者 出版社 税込価格 書評掲載回数(2回以上のもの) ◆朝日新聞: 5/7 朝刊 23 冊 古寺巡 和辻哲郎 ちくま学芸文庫 1,320死者の書 折口信夫 角川ソフィア文庫 1,012火定 澤田瞳子 PHP文芸文庫 968鹿男あをによし 万城目学 幻冬舎文庫 755ランボー怒りの改新(「満月と近鉄」所収) 前野ひろみち 角川文庫 704橋のない川(一) 住井すゑ 新潮文庫 1,045言語学バーリ・トゥード Round 1…
ポーの文庫ってどれを買ったらいいの!? 私は御多分に洩れずエドガー・アラン・ポーのファンです。ミステリ、ホラー、ゴシック、SF、ファンタジーといったジャンル全てのルーツになっていると言っても過言ではない(やや過言)作家なので、そういうジャンルが好きな人はだいたいポーが好きになるのです。 しかもポーの小説は全部短い。上記ジャンルのエッセンス中のエッセンスが、短編の形で凝縮している。何度読んでも面白いわけだし、もう持っているのに新しい文庫が出たりするとつい買ってしまうわけですね。 というわけでこのブログでもポーを紹介しようかと思ったものの、いざどのバージョンにしようかと考えると困ってしまった。種類…
西崎憲編訳の『怪奇小説日和 黄金時代傑作選』をパラパラと。フィッツ=ジェイムス・オブライエンの『墓を愛した少年』やJ・D・ベリズフォードの『喉切り農場』のような、数ページの短編は簡単に読めていい。各作者の紹介文も面白く、不思議なアイデアがどこから湧いて出たのか想像すると楽しい。 某所より。「高円寺の喫煙所に信じられないぐらいの美青年がいてどうしても目が離せなくて、そしたら目が合ってしまって、しかし青年は(ああ、またか…別にいいですよ、見ていても…)という顔をしただけだった。これが、格の違いか…」西新宿のせんべい屋がちょっとそこまで出かけてたのだろうか。シリーズ当初は煙草をくわえることもあったけ…
『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』澤西祐典・柴田元幸編訳(岩波書店) 芥川が英語読本に採用した全51編のなかから、選りすぐって新訳した作品集。 「I The Modern Series of English Literatureより」「身勝手な巨人」オスカー・ワイルド/畔柳和代訳(The Selfish Giant,Oscar Wilde,1888)★★★★☆ ――子供たちは学校帰りに巨人の庭で遊んだものでした。七年ぶりに帰ってきた巨人は、庭で子供たちが遊んでいるのを見て、「俺の庭だぞ」と言って追い出してしまいました。身勝手な巨人だったのです。やがて春が来て国じゅうが花や小鳥であふれましたが、…
写真はヒヨドリ、その右脇にオオキンカメムシ(2018.2) 昔買った文庫本を久しぶりに開いて、付箋を付けていたページに鳥の気配を見つけるように。 プレイリスト「2022.03_奇跡の果実」 昔買った文庫本を久しぶりに開いて、付箋を付けていたページに鳥の気配を見つけるように。 羽毛の白を湛えた月の光があるので空は決して暗くなることはない。栗の花は葉の緑を背に夜のあいだずっと白く映えている。仄暗い箇所は牧草地の野生の阿蘭陀芹(チャービル)の茂み。ケンブリッジ大学の方形の庭をゆく風はタタールやアラビアに達することはない。女子学寮ニューナム・コレッジの屋根の上空に広がる青灰色の雲のどこかで儚く潰えるだ…
空木春宵、初の作品集 2021年刊行作品。東京創元社のミステリ誌『ミステリーズ!』や、アンソロジーシリーズ「GENESiS」、Webメディアの「Webミステリーズ!」などに掲載されていた作品を単行本化したもの。早川書房の『SFが読みたい! 2022年版』の「ベストSF2021」では、国内部門、第三位にランクインしている。 筆者の空木春宵(うつぎしゅんしょう)は1984年生まれのエスエフ作家。「繭の見る夢」が第2回創元SF短編賞にて佳作入選となり作家デビューを果たしている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 少女を主人公とした物語。特に、少女同士の精神のつなが…
頭に霞がかかったようで気分も沈みがちなのは、第一に花粉症、次に八戸三春屋閉店のせいだけど(ホントに地下の食品売り場は良かった!)、海彼の干戈のうわさに因るところも少なしとせず。ふっと思い出したのが、林達夫の一文。「『旅順陥落』ーある読書の思い出」という。日露戦争には進歩的立ち位置にある日本のブルジョワジーによる反動主義的ブルジョワジー(つまりロシアの専制政治ということです)粉砕という側面があるとレーニンは指摘した。しかしその「後継者」を自認するスターリンはあろうことか、日本との戦争(これはもちろん第二次世界大戦)に当たって「赤軍兵士」の恨みを今やはらす時が来た(!)とアジっている。この臆面もな…
ポンド氏の逆説【新訳版】 (創元推理文庫) G・K・チェスタトン G. K. Chesterton - The Paradoxes of Mr Pond 読むと覚醒されざるを得ない小説がある。これはその種の小説だ。わたしは覚醒させられる作品が好きだ。チェスタトンのこの短篇集は短篇でここまで読者を覚醒させられるのかという驚きに満ちている。その驚きの源は逆説(paradox)である。逆説とは何か。一見矛盾しているようだが、という例のやつである。一見矛盾しているように見えて、じつは真理である。一見矛盾しているように見えて、じつはやっぱり矛盾している。この二つの場合があるから厄介だ。一見矛盾しているよ…
ツイート 裕 @you999 結局心臨の申込用紙届いてないわ。 23:56 裕 @you999 脇谷さん大学のポスト得られたんだ。良かったわ。 20:59 曽祢まさこ @chawneco 切り抜きシリーズ第三弾。 寄付するにしても、整理してリストを作って先方に必要かどうか確認を取らなくてはならないので(断られたという話も聞く)簡単にはいかないですね。 扉絵やイラストはある程度作家別にまとめられているのが唯一の救いか… https://twitter.com/i/web/status/1497142165750771716 18:39 裕 @you999 自閉スペクトラム症傾向の強い人達の知覚で…
この年になると視力の衰えは避けられない。先月チェックを終えたゲラの版面は、ページ数のフォントをやけに小さくしたデザインだった。もちろん目を凝らせばわかるのだけれど、一目では読みとれない。やれやれ~。 先日読んだヴァージニア・ウルフの『青と緑』の奥付には、「ブックスなんでもするわ」と書いてあるように見えた。一瞬おおっと思ったが、よく見ると「ならんですわる」だった。やれやれ~。 世界広しといえどこれを「なんでもするわ」と空目する人間は一人しかいなかろう。それにしても「ならんですわる」というのはいかにも西崎憲さんらしい感覚のレーベル名だと思う。全巻購入して並んで座らせたくなるではないか。
土曜日。 10時39分発の奥羽本線秋田行に乗るつもりだったけれど大雪の影響で運休。次の11時22分発快速弘前行に乗る。 11時46分浪岡駅。Hさん。千羽で昼食。唐揚げ定食、タンメン。今まで食べたことない感じの唐揚げおいしい。幼稚園の頃、お遊戯会の後に親に連れてきてもらった、と。肉のおがさわらのカレンダー、やたらダイエットを推してくる壁。20年以上前からずっとおばあちゃんのおばあちゃんが鍋を振っているらしい。会計のときおばあちゃんを近くで見ると眉毛をピンクで描いておりかわいかった。Hさんがこないだ来たときは紫だったらしい。 例の「ONE OK ROCK」の塀の前はきれいに除雪されていて文字がよく…