西川はま子という女性はその劇的な人生のため、手話法と口話法の歴史の中でほぼ必ず言及される方です。 はま子は1917年に滋賀県の裕福な家庭に生まれます。はま子がどれくらいの聴覚障害者であったかは判然としませんが、重度障害者ではなく、わずかながらも聴力を持っていた者のようです。はま子の父、西川吉之助は英語とドイツ語に堪能であったので、娘の聴覚障害が分かると、独自にアメリカやドイツの文献を研究し、それらの国で主流であった純口話法教育をはま子に行いました。父の熱心な指導のかいあり、はま子は読唇により相手の発言を聞き分け、発音も自然でした。はま子は全国各地で講演し、聴覚障害者と分からないような自然な口話…