漸く宿題図書の一冊、藤澤清造の「根津権現裏」を読み終えました。病苦に苛まれ、貧苦に灼かれる日乗と友人の自裁に関する種種、と謂う要約はやや乱暴に過ぎるでしょうか。該作は西村賢太氏が「歿後弟子」を自称するほど傾倒し、氏の注力により2011年に新潮文庫で復刊を果たしていますが、だんなが読んだのは角川文庫版です。西村氏の解説文には「該作で清造が随所に仕掛けているパロディカルなテクニックと、全篇に通底する戯作の精神を見逃してしまうならば、この小説の”人生の悲惨事だけを執拗に記した陰鬱なだけの世界”と云う、一部ですでに凝り固まっている従来の評価は、この先も延々と踏襲されるであろう」と書いておられます。残念…