高丘親王航海記 (文春文庫) 作者:澁澤 龍彦 文藝春秋 Amazon (ネタバレ)高丘親王は実在の人物である。平安時代の初期に平城天皇の第三皇子として生まれた。のちに出家し空海に弟子入りした。還暦を過ぎて仏法を究めるため、唐に渡り、さらに天竺を目指し、消息を絶った。 澁澤龍彦の遺作『高丘親王航海記』は親王が広州の港を出航するところから始まり、羅越国(シンガポール付近)で亡くなるまでを描いているので、小説の枠組みはおおむね史実に沿っている。しかし、史実に沿っているのは枠組みだけで、高丘親王と三人の従者の旅路は夢と奇想に溢れた幻想譚である。 そもそもなぜ親王は天竺を目指すのか。「仏法を究めるため…