『冗談じゃないさ。間違いなく海はお主の味方だ。お主は海の申し子だ』 この作品で特に爽快な気分になったのは、鬼作左こと本多作左衛門重次が向井正綱を口説くこのシーンと、小田原合戦で秀吉の面前で行われた、石田三成による向井正綱と長宗我部元親への審問のシーンである。 どちらも自由人である海人の気質を最大限に表現した、胸のすくいい気分になる場面である。もちろん他にも素敵な場面はたくさんある。読んでいてとても気持ちのいい作品である。 「見知らぬ海へ」は、隆慶一郎氏による「向井正綱」の物語。 ・海の上では自由人である海賊(水軍)・隆氏の作品に共通している自由人をモチーフにした作品・ユートピアへの憧れ いろい…