最近、ゲイリーの4冊目『イエスとブッタが…』の中で、 アーテンパーサが言っていた(たぶん) 〝見過ごす〟ことが日常になってしまっている。 父の形見の腕時計がどこを探しても見当たらなかった。 この腕時計は、20年くらい前に僕が香港で購入し、 父に贈ったもので、そんなに高価なものではないのに、 父は「息子からもらった」と言って大切にしてくれていた。 父の死後は僕が身に着けていたのだが、 普段から腕時計をすることに慣れていないせいか、 どこかにひょい、と置き忘れてきてしまったのだ。 部屋中をあちこち探しているうち、あることに気づいた。 「オレ、いま、なんにも気にせず、ただ探してる!」 焦りもなければ…