通話スペースの空気は淀んでいる。こんなところで、楽しそうに電話をする人間はいない。私以外の2人も、何やら神妙な面持ちをしていた。 自動販売機の不味そうな菓子パンは、賞味期限がやたらと長くて不気味だ。私は相手に一言お礼を言い、通話を終わらせた。 病室に戻ると、みーのお母さんが、布団が片付けられたベッドを指先で撫でていた。私に気が付くとすぐに視線を上げる。「なっこちゃん、もういいのよ。私一人でできるし、バイト行ってもらって」「大丈夫です。代わり、見つかったので」「最後まで、迷惑をかけるわね」 そう話す彼女の顔には、数日前とは別人のような疲れが浮かんでいる。この一年、ずっと疲れていたようには見えたけ…