井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(15) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム 2 エゴイズムの問題 の続き(p.51~)である。 井上は、正義は道徳的価値のすべてではなく、一つの道徳的価値であると述べている。そして衡平の概念についても述べている。この点は後で見ることにして、先に、正のエゴイズムと負のエゴイズムの論述の続きを見ていこう。 正のエゴイズムと負のエゴイズム 簡単に言えば、負のエゴイズムとは「自分(たち)さえ良ければいい」という考えであり、正のエゴイズムとは「自分はどうでもよく、他者が良ければいい」という考えである。 井上は、いわゆる「利己主義者」及び「排他…