現在、バフチンの名著『ドストエフスキーの詩学』を読んでおり、バフチンの怜悧さに驚嘆しながらも、『本統に此処まで上手くドストエフスキーを理論化できるのだろうか』という疑問に憑依された。 現在、読んでいるかぎりにおいて、『ドストエフスキーの詩学』を簡略に整理整頓すると、『登場人物たちが重なり合わない状態で対話をつづける』畢竟『ポリフォニー』と、『地位や年齢などを凌駕した対話を可能にさせる渾沌の状態』畢竟『カーニバル』がドストエフスキー文學の特徴であるというのである。バフチンによれば、このポリフォニーとカーニバルを純粋な意味で実現しているのは(二十世紀前葉、バフチンの時代において)ドストエフスキーひ…