前回、アグネス・スメトレーの高杉一郎訳『中国の歌ごえ』がもたらした広範な分野への影響にふれたが、それは著者や訳者も思いもかけなかったであろうコミックへも及んでいるのである。 昭和五十六年にさいとう・たかをはゴルゴ13を主人公とする「毛沢東の遺言」(『毛沢東の遺言』所収、「ゴルゴ13」51、リイド社)を発表している。このストーリーを紹介しよう。舞台は北京から始まる。中国は文化大革命と四人組の追放を終え、近代化という資本主義への道を進み始めていた。その中で中国革命の巨星だった毛沢東、周恩来、朱徳たちが次々と没し、生存している数少ない指導者の一人が葉剣英であった。彼は病床にあって、弁公室(国方情報局…