小学校に上がる前の記憶なのではっきりしないのだが、秋になると近所の神社に芝居小屋が設けられ、田舎芝居が昼から夜にかけて行われていた。近辺の人はそれぞれの家からゴザを持ち出し、空いている場所にそれを広げて鑑賞した。その頃は、テレビなどない時代で、お祭りは庶民の楽しみであった。子供達は神社の境内に並んだ屋台で、駄菓子を買ったり、射的や金魚釣りなどのゲームをして楽しんだ。芝居の方は大人たちの楽しみだったが、付き合わされた子供の私には迷惑な話であった。話の筋がさっぱりわからず、楽しめたのはチャンチャンバラバラと切りあう場面だけだった。このようなわけでどのような演目があったのかは定かではない。それらの中…