太宰治、中期の小説。『新潮』(1940年5月号)に初出し、単行本『女の決闘』(1940年6月)に初めて収録された。1955年に初めて採択されて以来、教科書の安定教材としても君臨する。実際、現行の中学の国語教科書5社すべてがこれを採用している。親友のセリヌンティウスを助けるためにメロスが全力疾走する友情の物語ということになっており、たしかに多くの読者を感動させてきたことは事実であるけれども、他方で単なる美談であるという意見には少なからず疑義も提出されている。なお「走れメロス」は太宰治のオリジナルではなく、ヒギンの寓話とシラーの「人質」(小栗孝則訳)という譚詩をもとにして書かれたということが今日では明らかになっている。