足利直義は朝廷の権威を尊重する人物である。 と、このように切り出してしまうと「何をいまさら」という感想が返ってきそうです。そんなことは知れ切った話ではないか、と。 それはそうなのですが、但し、私が表現したところの「朝廷の権威を尊重する」という文言はやや不正確――少なくとも十分に正しくはありません。というのも、足利直義が朝廷の権威を尊重していたのは確かだったとしても、それには「秩序や道理を侵犯しない限りにおいて」という但し書きが付されていたと思われるからです。 本記事では、そのことの一端を示す史料を提示します。 なお本記事は、永井英治「南北朝内乱初期の裁判における幕府・朝廷関係」(『年報中世研究…