外国の付加価値税等との二重取りを避けるため、輸出品は消費税を免税される。
しかし輸出企業は仕入れの際に消費税を支払っている。仕入れに掛かった消費税を政府から還付する制度が輸出戻し税である。
本来は輸出品に関連する取引全てに消費税を免除するシステムであるが、事務処理の都合等で、最後で帳尻を合わせる形を取っている。
最終製品企業が部品企業から100万円の部品を仕入れ、300万円で販売する場合の例を、国内販売の場合と国外販売の場合とで例示する(消費税率は5%とする)。
国内販売
税込売上 | 仕入 | 与り消費税 | 支払消費税 | 納税額 | 利益 | 消費税の受払 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
部品企業 | 105 | 5 | 0 | 5 | 100 | 0 | |
最終製品企業 | 315 | 105 | 15 | 5 | 10 | 200 | 0 |
国外販売(現状の机上計算)
税込売上 | 仕入 | 与り消費税 | 支払消費税 | 納税額 | 利益 | 消費税の受払 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
部品企業 | 105 | 5 | 0 | 5 | 100 | 0 | |
最終製品企業 | 300 | 105 | 0 | 5 | -5 | 200 | 0 |
国外販売(本来の形態)
税込売上 | 仕入 | 与り消費税 | 支払消費税 | 納税額 | 利益 | 消費税の受払 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
部品企業 | 100 | 0 | 0 | 0 | 100 | 0 | |
最終製品企業 | 300 | 100 | 0 | 0 | 0 | 200 | 0 |
原理的には、現状と本来の形態は同じ計算になる。
しかし現実的には、本来の形態と比較して最終製品企業からの値下げ要求が強くなるため、
国外販売(現状の実情)
税込売上 | 仕入 | 与り消費税 | 支払消費税 | 納税額 | 利益 | 消費税の受払 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
部品企業 | 100 | 4.8 | 0 | 4.8 | 95.2 | 0 | |
最終製品企業 | 300 | 100 | 0 | 4.8 | -4.8 | 204.8 | 0 |
となるのであり、最終製品企業が部品企業から利益を吸い上げる形になる。
消費税の受払(消費税受取額−消費税支払額−納税額=益税)の欄がいずれも0となっていることから、還付金によって輸出企業が利益を得るわけではない、と説明する向きもある。
これは机上の論理のみに注目して実際の経済活動を考慮しない誤った認識である。
一方、還付金を益税であるとして批判する意見がしばしば見られるが、部品企業と最終輸出企業の問題である。国民の血税から不当に利益供与されているわけではない。