喧騒の時代の、遠い夏の日の午後 M・Aは私の家を訪ねてきた 実家通いだった私の住所をどこで調べてきたのか 私はその時、家にはいなくてM・Aは母に会って私の名前を呼んだ 私がとりあえずどんな所に住んでいるのかを 確かめにきたのだろうか 私の母にどう自己紹介したのだろうか 同じ大学に行っていることしか 知らないわけだから 母がなんと思ったのか あとで私はそれを訊かなかった 私はそれまでM・Aのことを 東京の自由な高校を出ていたことぐらいしか 知らなかった 私のある先輩は女闘士のようなイメージでM・Aのことを 私に匂わせた 何となく私とM・Aとは育ちが違う気がして 私はM・Aの所へ訪ね返そうとはしな…