近江国大津で生産されたとみられる酒。大津に近い山科を領した公家・山科家は、山科東庄を通じて大津棰を調達し、贈答に用いている。 大津の酒造業 大津棰の調達 山科家の贈答品 参考文献 大津の酒造業 園城寺(三井寺)の門前町として、また琵琶湖西岸の港町として栄えた大津では、中世後期、酒造業の発展もみられた。延徳二年(1490)八月、「大津・松本酒屋役」が園城寺雑掌に命じられている。 大津棰の調達 山科家の家司・大沢久守を主な記主とする『山科家礼記』には、大津棰の調達および贈答に関する記録が散見される。初出は文明十二年(1480)四月二十五日条であり、応仁・文明の乱終結後、京都にも流通した酒と考えられ…