キリスト教的な価値観が長く支配したヨーロッパ社会ではキリスト教の神の意にかなうことが善で、それにそむくことが悪でした。人間は強者に対する弱者の妬みや嫉み(ルサンチマン=憤り、怨恨、憎悪)をいつも生み出します。そして、強者に対する弱者の不平不満の気持ちが、過去への復讐心や未来への償いを求める心(「今はつらいが、未来や来世は必ず良くなる」という他力の心)を生み出します。人は、「道徳的には自分が正しい、いずれあいつらは地獄に落ち、自分は天国にいける」という気持ちを持ち、これが善悪という価値の起源になる、というのがニーチェの主張です。キリスト教的価値観はこの考えにぴったり適合します。ニーチェはキリスト…