(あいくちげいしゃ)1911年(明44)樋口隆文館刊。前後2巻。前半は華族令嬢一行4名の旅行客と見せかけた詐欺窃盗の一味の鮮やかな犯行と逃避行を塩原・那須の風光明媚な景勝描写とともに描いている。しかし後半は秩父困民党事件での実在した人物たち(田代栄助、加藤織平、落合虎一/寅市)の動静を詳述している。二通りの物語の要素を結合させたのは作者黙禅の手腕でもあるが、騒乱の後日談も含めると主人公役の視点が浮動的なのが少々気になった。いつものように登場人物の多さとスケールの広さでは読み応えがあった。☆☆☆ 国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は長谷川小信。 https://dl.ndl.go.jp/…