この小説は、「老いの愉楽_『老人文学』の魅力」で紹介されていてすぐに読んだ。こんな小説があったのだ。学生運動が主題に含まれる小説は大江健三郎、村上春樹を始め、三田誠広、高橋和巳、柴田翔、庄司薫、倉橋由美子、藤原伊織、辻井 喬、桐山襲などを読んできた。(野上弥生子「迷路」と加賀乙彦の「湿原」は読了できず。)黒井千次のものは知らなかった。「羽根と翼」は主人公が65歳と現在のぼくの年齢に一番近い。大企業の部長で定年退職後、学生の頃を回想する小説は今の自分にピッタリだった。全共闘より前の世代、60年安保の全学連より前の、日共六全協以後の世代の学生運動だった。学生運動といっても「血のメーデー事件」後の、…