第一章二6では、近代化と近代西洋医学の発達について述べましたが、その中に次のような一文がありました。 18~19世紀、産業革命が起きた西欧では、都市の労働者などの貧民層を中心とする患者向けの大病院を、国家が建設するようになりました。 成育歴や生活状況が分からない重症患者を大量に診察する必要から、病気そのものを病人から区別された実体として扱う「病気中心主義医学」が始まったのです。 この中にある、病気だけを対象とする「病気中心主義医学」というのは、今回の内容に出てくる中川米造氏の著書にあった言葉です。こうして「どんな生活状況にある人か」という個人の理解がなされなくとも適用できる、近代科学的な医療が…