1947年11月9日、東京生まれ。作家、評論家。早稲田大学文学部講師 桃山高校卒業後、十数種の職業を転々とする。京都文学学校自主講座運動、京大西部講堂連絡協議会、劇団曲馬館などに関わる。 評論に「北米探偵小説論」(日本推理作家協会賞受賞)、小説に「アノニマス」。 筆名(?)は横溝正史「びっくり箱殺人事件」の登場人物からか?
…先日ムック「 ユリイカ」( 青土社刊)の2020年12月号として刊行された「偽書の世界」に掲載されたエッセイのコピーが、 私宛に送られてきた。表書きを見ると「謹呈 井沢元彦先生 呉座勇一拝」とあった。例によって言葉は丁寧だが、私に「推理小説家に戻られてはいかがだろうか」などと私の歴史家としての仕事を全て否定した男からのものからであった。内容を見ると「甲陽軍鑑は真書である」という私の年来の主張が裏付けられたことがよほど気に入らないらしい。あれこれ揚げ足取りをして、挙句の果てには「まぐれ当たりである。軽はずみに真書と断定し、それがたまたま当たっていた。それだけの話である。いわば『逆張りの日本史』…
まったくの虚無状態に陥り次第に何もしなくなっていくバートルビー。そんな男と相対した人間の、戸惑い、苛立ち、同情、疑い、諦め、保身、親切心、寂寥といった心の機微が書かれる。「しない方がいいと思います」。どんな要望もそう返され、静かに無視される。精神病について多少の予備知識のあるつもりの私達も、結局語り手と似たような経過しか辿れないだろう。完全に閉じてしまった人に対して、他の人間ができることなど皆無だ。関係の無力さ、断絶について考えさせられる。傍役の助手たちのキャラが立っていて序盤にコミカルさを与えている。 単なる精神病者バートルビーの経過(悪化)、という単純な読み取りでは、物語の素晴らしさを損な…
●第五回オンライン横溝読書会を開催した。課題図書は『びっくり箱殺人事件』。雑誌『月刊読売』に、昭和二十三年に連載された作品である。参加者は私を含めて十名。 ●会ではネタバレ全開だったのだが、このレポートでは当然その辺りは非公開である。なお各項目末尾に数字が付されている場合、角川文庫『びっくり箱殺人事件』旧版のページを示す。 ============◆まずは参加者各位の感想を簡単に語っていただく============「初読は二十代の頃で、そのときはファースについていけなかったけど、年を経て今読むと面白い」「さっと読むと動きだけ追ってしまう。細かいユーモアをひとつひとつ調べてたらすごく時間がかか…
※※※横溝正史『びっくり箱殺人事件』ディクスン・カー『盲目の理髪師』クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』のネタバレがあります※※※ 去る1月23日に開催されたオンライン読書会に合わせて横溝正史『びっくり箱殺人事件』を再読した。初読は確か中学3年、15歳の時だ。杉本一文氏による不気味な表紙イラストとは裏腹に、これまで読んできた横溝作品とは異なるドタバタとコミカルな雰囲気に戸惑いながらも面白く読んだ記憶がある。「モギャー」「タハハ」「チーララアのラララア」といった個性的な擬音は、今でもつい口にしてしまう心地よさがある。 『びっくり箱殺人事件』は昭和23年に発表された長編探偵小説である。舞台は戦後間も…
極私的回顧第9弾は本格ミステリ(海外)です。ようやく当ブログの平常運転(??)に入るというところでしょうか。いつものことですが、テキスト作成のため『このミス』ほか各種ランキング、およびamazonほか各種レビューを適宜参照しています。
// リンク 部屋を片付けていて発掘された本を読んでみた。アントニー・マン/玉木亨訳の「フランクを始末するには」(創元推理文庫)だ。奥付には『2012年4月27日 初版』とあるので、8年半くらい前に出た本である。 巻末の野崎六助氏の解説によれば、著者のアントニー・マンはオーストラリアの作家である。本書「フランクを始末するには」が第1短編集で、表題作になっている「フランクを始末するには」で1999年に英国推理作家協会短編賞を受賞しているらしい。とても寡作な作家のようだ。 「フランクを始末するには」には12篇の短編が収録されている。 マイロとおれ緑エディプス・コンプレックスの変種豚買いものエスター…
ミステリーのベスト表作りが楽しかったのは、せいぜい二十代の半ばくらいまでだ。その頃までは私的なリスト作りが、自分のミステリー観を他人に伝えるための、有効な表現手段になりうると信じていた。 ――法月綸太郎「ミステリー通になるための100冊(海外編)」 ハルヒの新刊が出て、読んで、長門有希の100冊(長門有希の100冊とは (ナガトユキノヒャクサツとは) [単語記事] - ニコニコ大百科))はなんだかんだいって大学時代のミステリとSFの読書の指標にはなっていたんだな、と思い直すなどしました。新本格前後の作品がそれなりにあったし、それをありがたがるくらいにはなにも手掛かりを持たない読者でした。 では…
ユリイカ 2020年12月号 特集=偽書の世界 ーディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書までー 作者:馬部隆弘,小澤実,原田実,乗代雄介,呉座勇一 発売日: 2020/11/27 メディア: ムック 古代、中世、近代、歴史の間に間に、偽書は突如現われる。発見され、執筆され、拡散される。それはパッチワークなのか、アンソロジーなのか、カノンとされたものが偽書となるとき、変容するのは歴史か解釈か。『椿井文書』(中公新書)が広く読まれるいま、問い返す。 特集*偽書の世界――ディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書まで ❖対談文書をめぐる冒険――古文書・偽文書・…
20年10月の書籍雑誌推定販売金額は1000億円で、前年比6.6%増。 書籍は536億円で、同14.0%増。 雑誌は464億円で、同0.8%減。 その内訳は月刊誌が382億円で、同0.5%増、週刊誌は82億円で、同6.4%減。 返品率は書籍が32.2%、雑誌は41.3%で、月刊誌は40.6%、週刊誌は44.1%。 書籍は出回り金額の6%増、送品ボリュームの多量さ、返品率の大幅改善、前年の台風と消費税増税による売上不振の4つの要因が相乗し、近来にないプラスとなった。 書店店頭売上も書籍は6%増、児童書は『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(集英社みらい文庫)のヒットで11%増、ビジネス書は『人は話し…
文芸誌掲載情報 2020年7月発売号 ちくま 2020年7月号 ちくま 2020年7月号(No.592) 作者: 筑摩書房 発売日: 2020/07/01 メディア: Kindle版 〈spring 5〉恩田陸―24 筑摩書房 PR誌ちくま カドブンノベル 2020年8月号 カドブンノベル 2020年8月号 作者: 角川書店 発売日: 2020/07/10 メディア: Kindle版 【集中掲載 最終回】 ★森見登美彦・著 上田誠・原案「四畳半タイムマシンブルース 最終回」 世界の存続と、恋路の行方は――? 「昨日」と「今日」だけのタイムトラベル物語、ここに完結! カドブンノベル 2020年8…
はい。今日はお勉強会。と言うことでフルタイムでお店に行かなければいけません。そして明日からは4連勤。これって実質5連勤じゃんね。 何が悲しくて、働いている店に5日連続で行かなきゃならないんだって話ですよ。 ってか土日休みの方は、5連勤が当たり前なのか。 私には無理だ(ちーん) と言うことで本日は11日。なので私の読書録がネットの大海へと解き放たれる日です。本日は2005年どの読書録を一気に放出しようと思います。 では早速スタートです。 ・福井晴敏『6ステイン』・・・福井先生の短編集。とは言えども、その重厚感は長編に勝るとも劣らない。 ・芦辺拓『切断都市』・・・当時の合併ブームに、一石を投じるよ…