もとをただせば、れっきとした…… 先祖がいつ拙宅にやって来たのだったか、記憶にない。三十年は経っている。玄関から門扉までのほんのわずかな通路の両側に、つまり建屋沿いとブロック塀沿いとに、丈三十センチほどの緑葉を茂らせている。 当初は高級めかして取り澄ましたものだった。径二十センチ高さ三十センチほとでやや下すぼまりの、藍色釉のかかった飾り鉢に納まっていた。姿も花色も豪華といえば豪華、大味といえば大味で、父好みでも母好みでもなかった。いただき物だったろう。そのころ贈答用園芸植物として流行していた君子蘭である。正しくは君子蘭だった。 開花直前の状態でいただいたわけだから、その年は見事に咲いた。翌年以…