清盛は、五十一歳の時、出家し、浄海《じょうかい》と名乗った。 大病にかかったのが、きっかけで、 さしもの彼も、少しばかり、気が弱くなったらしい。 しかし、たちまち、病は全快、彼はつるつる頭を撫でながら、 「まだ当分生きられるぞ」 といってほくそ笑んだ。 とにかく、平家一族の繁栄振りは、ちょっと類がなかった。 かつての名門の貴族たちにしても、 今では、まともに顔も合せられない有様である。 平家に非ずんば人に非ずといった言葉も、 むしろ当然のように迎えられたし、 六波羅《ろくはら》風と言えば、猫も杓子も、右へならえで、 烏帽子《えぼし》の折り方やら、着つけの仕方まで、 皆が平家一族を真似するのであ…