十日 あさいして、日たけて起たり。 けふは、此江刺ノ郡黒石(水沢市)ノ行道の家に在りて人々と歌よみあそび、あすなん胆沢にいなんなンどいへるに、とみなる事とてふみもて来れば、こを見つゝ常雄は皈り去(イエ)き。 よべよりこゝに、めくらほふしども来宿(キヤド)りたるをよび出れば、南部閉井(伊)ノ郡の浦人、宮古(ミヤコ)の藤原(宮古市藤畑カ)といふ処といへり。 語りさふらへといへば紙張の三絃とうだし、こわつくりして、尼公物語とて、佐藤庄司が家(ヤド)に弁慶、義経、偽(ツクリ)山臥となりてやどりし事を語り、をへぬれば小盲人(コホフシ)出て手をはたとうちて、それ、ものがたり語りさふらふ。 「黄金(コガネ)…