どちらかと言うと物覚えが悪い。 いや、申し訳ない。つい見栄を張ってしまった。どちらかと言うと、ではない。どちらから言っても物覚えが悪いのだ。 私が悪いのではなく、頭が悪いせいである。 仕事の締め切りを忘れたり、打ち合わせの時間を間違えたりするのも、すべて私の頭のせいである。文句は、私にではなく、私の頭に言ってほしいものだ。 さて、そんな物覚えの悪い私でも、いくつかそらで言える言葉がある。四捨五入して100年も生きていると、気に入った言葉の一つや二つは覚えることができるのだ。 「願わくは花の下にて春死なん その如月の望月のころ」 これは、西行の詠んだ歌で、死ぬんだったら、気候のいい春に満開の桜の…