「世界よ、他意なきわれらを容れよ」か。無理な相談だ。率直さもかんたんに罪になりうる世のなかでは。 ―ドクトル・クロコフスキー― *** この不透明な時代に、我々は拠りどころとなる世界を求めずにはいられなくなる。そこでアップデートされた神話が復権するのではないかとおもう。それは集合無意識ではあるだろうが、旧来の物語とは一線を画すものであるはずだ。 それは世界を描いてはいなくても、ある仕方で世界を切り取っていなければならない。その世界は不完全でありながらも、はじめからおわりまで聞き手を引きこまなければならない。語り手にも謎がのこされなければならない。こんなものだれも書けない。禁止事項が多すぎる。 …