南千住の集文堂書店が、創業以来百二年にわたって提げてきた暖簾を、さきごろ降ろした。 全国展開する超大型書店が繁華街にビルを構え、大量情報の大量販売を競う時代がやって来て、すでに久しい。それら超大型店すらが、紙媒体の衰退により経営形態の変革を迫らる時代となった。 それよりもずっとずうっと以前、書店は町内の情報センターであり地域の文化施設だった。通りすがりの住民は店内に立寄り、流行の匂いを嗅いだ。定連客は贔屓作家の新刊を視逃すまいとし、定期購読雑誌の最新号の到着を待ちわびた。近隣の小中学校へは教科書や副教材を届けた。 しっかりした考えのご店主による、地元に根づいた書店が数軒あることで、町の住民の文…