本能寺にて信長、横死す――この報せは、あっと言う間に雑賀に伝わった。 先の政変で壊滅的な打撃を受けていた土橋派は、しかし未だ強い勢力を保持していたようで、この報せを受け即座に決起する。まず4か月前のクーデターで、土橋若太夫を裏切った土橋兵太夫・土橋子左衛門の両名を襲い、兵太夫を殺害する(小左衛門は逃亡)。 また信長派の頭目・雑賀孫一を誅殺すべく館に押しかけたが、流石は孫一、戦場で鍛えられた進退の勘所を遺憾なく発揮したようで、館は既にもぬけの殻だった。彼はいち早く織田方の勢力圏内であった、和泉国・岸和田城へと逃げ込んだのであった。 月岡芳年作「太魁題百撰相 謎解き浮世絵叢書」より。「銃弾に貫かれ…