グリム童話と並び称されるアンデルセンの童話は、代表的なものに「人魚姫」「みにくいあひるの子」「裸の王様」などがあるが、日本に紹介されたのは、やはりグリム童話と同様に明治期からである。 中島孤島はアンデルセンの童話についてもいくつか翻訳を残している。 まずおそらく最初に書いたのは、文芸雑誌『新小説』掲載の『雛菊』だと思われる。 これは当時執筆を担当していた「海外文壇」欄であり、童話紹介とはいえ、ほとんど大人向けに書いている。 冒頭を少し引用してみる。 ゛さあお聞きなさい。 お前も多分見て知っておいでだろうが、あの田舎の、それ路傍(みちばた)にある百姓家ねー、前には少しばかりの庭と、ペンキで塗った…